気候変動への対応(TCFD提言に基づく情報開示)

基本的な考え方

ナックグループでは、脱炭素社会の実現を重要課題のひとつとして捉えており、2021年9月には気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同も表明しております。また、TCFD提言に賛同する企業や金融機関が一体となって取り組みを推進するTCFDコンソーシアムにも加盟しております。
TCFD提言に基づき、気候変動に関する前向きな開示の検討を進めております。

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同および TCFD コンソーシアムへの加盟

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1.ガバナンス

a) 気候関連のリスク及び機会についての、取締役会による監視体制

当社は、気候変動が事業活動へ与える影響は重要なものであると捉え、気候関連の目標の達成・進捗状況を把握し、経営に反映させる必要があると考えております。そこで、半期に1度以上、サステナビリティ推進PJより取締役会にて状況報告することで、取締役会が気候変動によるリスクと機会の実態を把握・監視できる体制を構築し、気候変動に関するガバナンスの強化を進めています。

取締役会は、1ヶ月に1回以上開催し、当社企業集団の経営上の重要な事項についての意思決定を行うと共に、業務執行の監督を行っています。戦略、行動計画、リスク管理方針、目標設定、目標の進捗のモニタリング及び監督等に関しても、気候関連問題への影響を考慮した上で意思決定を行っております。

b) 気候関連のリスク及び機会を評価・管理する上での経営者の役割

当社の取締役会では、気候変動に関するリスク・機会を経営上の重要な事項とし、意思決定および業務執行の監督を行っております。その中で、取締役会議長でもある代表取締役社長が気候関連問題の責任者となります。

気候関連問題を含むサステナビリティ課題に対応する役割をサステナビリティ推進PJが担い、サステナビリティに対する執行責任を負う管理部門管掌役員のもと、リスク、機会の評価、戦略、計画、予算の見直しと指導、設定した目標に対する進捗状況をモニタリングし、その結果を取締役会にて報告・審議しています。

2.戦略

(1)リスク及び機会の特定

ナックグループの内、株式会社ナックのクリクラ事業、レンタル事業、建築コンサルティング事業を対象として、気候変動に関連するリスクと機会の特定を進めております。

リスク

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世の中の変化 ナックグループのリスク 影響事業 影響内容 影響項目
移行リスク GHGガス排出規制 化石燃料の高騰 全社
  • ガソリン車から低公害車への移行に関する導入費用
※ガソリン車:約1,300台
費用増加
再エネ利用への移行 クリクラ
  • クリクラプラントにおけるGHGガス低排出の設備への入替費用
費用増加
炭素税の引き上げ 全社
  • CO2排出に伴う課税による税負担の増加
※炭素税:10,000円/t-CO2換算
費用増加
物理的リスク 台風・豪雨
などによる水害
営業・製造拠点の停止 クリクラ
  • 製造機能の停止
  • 営業拠点の機能停止による売上高減少
  • 被害拠点の復旧費用
※ハザードマップ参照(国土交通省)
※該当プラント:4プラント/10プラント
該当拠点:12拠点/28拠点
売上高減少
費用増加
レンタル
  • 営業拠点の機能停止による売上高減少
  • 被害拠点の復旧費用
※ハザードマップ参照(国土交通省)
※該当拠点:27拠点/61拠点
売上高減少
費用増加
平均気温の上昇 設備投資 全社
  • 空調設備増設に伴う設備投資費用の増加
費用増加
配送業務の
効率低下
クリクラ
レンタル
  • 配送員増員による人件費増加
費用増加
海面上昇 沿岸地域の
拠点移転
全社
  • 沿岸地域の営業拠点およびプラントの移転費用
費用増加
良質な水資源不足 原水確保のコスト増 クリクラ
  • 水道料金高騰による原水確保費用の増加
※2040年1.36倍(2015年比)
※参照:EY新日本有限責任監査法人
費用増加

機会

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側面 事業部 世の中の変化 機会の内容 影響項目
資源の効率性 コンサル 研修・セミナーオンライン化の更なる進展
  • 潜在顧客へのアプローチの実現
  • 諸経費(印刷費/デザイン費)の削減
売上高増加
費用減少
エネルギー源 全社 低公害車(EV車など)普及
  • 車両維持に関するトータルコストの削減
費用減少
製品/サービス クリクラ 省資源・低排出技術の開発
  • 環境負荷の少ないプラント設備を加盟店向けに販売
売上高増加
クリクラ 飲料水需要の高まり
  • 繁忙期の伸長による売上高増
売上高増加
レンタル 害虫駆除機の需要の高まり
  • 出店エリア拡大による売上高増加
売上高増加
市場 クリクラ 防災意識の高まり
  • ローリングストック啓蒙による消費促進
売上高増加
全社 環境を意識した消費行動
  • リユース商品の需要増加による顧客増
  • リターナブルボトルの優位性による顧客増
  • プレミアムサービス会員へのサービス拡充による解約率の低減
売上高増加

※上記のリスクと機会に関しましては、主に株式会社ナック単体での検討内容となりますため、今後対象範囲をグループ全体へ広げた上で検討を行い、適宜上表へ追加予定です。

(2)シナリオ分析

気候変動による世界的な平均気温の上昇について、ナックグループでは2℃上昇した場合、4℃上昇した場合、それぞれのシナリオを採用し、検討を行っております。
まずは株式会社ナック単体に関わるシナリオ分析の大枠に関して各事業と議論の場を持ち、より事業戦略に即し、具体性の高い内容へと検討を進めているところです。

①シナリオ群の定義

想定期間 2030年~2050年
シナリオ定義 2.0℃シナリオ
(IPCC RCP2.6)
4.0℃シナリオ
(IPCC RCP8.5)

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2.0℃上昇の世界 4.0℃上昇の世界
政策・規制
  • 炭素税の引き上げ
  • GHG排出制限
  • 特段の政策や規制はなし
調達
  • グリーンエネルギー普及による電力価格上昇
  • 原材料費の高騰
  • サプライチェーンにおける洪水被害の増加
配送
  • 低公害車への移行
  • 原油価格上昇により、電力等コストの上昇
商品・サービス
  • サステナブル商品の需要増加
  • 飲料水、防災関連商品の需要の高まり

シナリオ群の定義に関しましては、外部機関による科学的根拠等を参考に、当社内でのディスカッションを通してそれぞれの社会像を定義し、上記想定期間の世界観を考察しました。

※前提を変えたシナリオ分析や対象事業範囲の拡大に関しても、順次検討を行う予定です。

②シナリオ分析結果

平均気温2.0℃上昇および4.0℃上昇の世界において、当社が受ける影響の特定を行いましたが、一定程度のレジリエンスにより何れも軽微であるとの結果になりました。
今後は、影響想定範囲をサプライチェーン全体まで広げ考察を進めていくとともに、気候変動に関する情勢の変化を引き続き注視してまいります。

3.リスク管理

a) 気候関連リスクを識別・評価するプロセス

ナックグループは、リスクおよび機会の特定やシナリオ分析を通して、サプライチェーン全体を含むグループの事業領域が気候変動によって受ける影響の把握・評価を進めております。
主管部門であるサステナビリティ推進PJを中心に、各事業部へのヒアリングをもとに気候変動によるリスクと機会の抽出から識別・評価まで行っており、年に1回以上、見直しのプロセスを設けております。

b) 気候関連リスクを管理するプロセス

重要な影響を与えると評価されたリスクと機会に対し、サステナビリティ推進PJを中心に各事業部と具体的な対応策について検討、対応方針を策定の上、年2回以上は取締役会へ報告を行い、その内容を含む気候関連問題への対応全般に関して監督を受ける体制を構築しております。

c) 上記プロセスの組織の総合的リスク管理における位置付け

ナックグループではリスク管理規程を制定し、各事業にてリスクに関しての状況報告、課題の検討とあわせ、リスク情報の共有を行い、グループ経営会議でのリスク対応方針の審議を経て取締役会で決定されます。
気候関連リスクにおいては、サステナビリティ推進PJからの報告に基づき、取締役会にて決定を行うものとしております。

4.指標と目標

ナックグループでは、GHG排出量に関して、日本政府目標に準じ、2050年までのカーボンニュートラルを目指します。

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2023年度 実績 2030年度 目標 2050年度 目標
Scope1+Scope2 7,908 t-CO2 7,010 t-CO2
(2021年度比25%減)
0 t-CO2
(2021年度比100%減)

※集計期間は会計年度に準ずるものとし、各年度4月~翌3月としております。

目標達成へ向けた主な取組みとしましては、以下のような取り組みを検討しております。

  • 低公害車の導入
  • 再生可能エネルギー由来の電力への切り替え
  • 太陽光パネル設置拠点での売電から自家消費への切り替え
  • クリクラ製造工程におけるガス使用量削減の検討
  • 他、技術革新の成果をいち早く取り入れるための情報収集、提携の検討等

低公害車や再生可能エネルギー導入へ向けた積極的な情報収集を始めとし、関連分野での外部との提携も視野に包括的な取り組みを進めることを検討しております。
具体的な進捗としましては、レンタル事業にて電気自動車の実証実験を開始したことに加え、再生可能エネルギーでの電力調達に関する情報収集、ガス使用量削減のための検討を開始している段階となります。

尚、GHG排出量以外の指標に関しては、サステナビリティ全般において重要課題として別途マテリアリティの設定を行っており、その内のひとつとして「脱炭素社会の実現」を掲げております。

ナックのサステナビリティ

Scope3に基づくサプライチェーンGHG排出量算定

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カテゴリ カテゴリ名 GHG排出量(t-CO2)
カテゴリ1 購入した製品・サービス 64,039
カテゴリ2 資本財 101
カテゴリ3 Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー活動 529
カテゴリ4 輸送、配送(上流) 5,212
カテゴリ5 事業から出る廃棄物 1,168
カテゴリ6 出張 88
カテゴリ7 雇用者の通勤 495
カテゴリ8 リース資産(上流) 算定除外
カテゴリ9 輸送、配送(下流) 1,343
カテゴリ10 販売した製品の加工 算定除外
カテゴリ11 販売した製品の使用 算定除外
カテゴリ12 販売した製品の廃棄 36
カテゴリ13 リース資産(下流) 2,856
カテゴリ14 フランチャイズ 3,692
カテゴリ15 投資 算定除外

Scope3におけるGHG排出量削減施策につきましては、現在、影響の大きいカテゴリ別に検討を進めております。

※Scope3排出量の算定方法
産業連関表による環境負荷原単位データブック(3EID)(2015年)や産業技術総合研究所のIDEA v2.3、環境省のサプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベースVer3.1等を参照しました。
今後、参照先および算定条件変更に伴い、GHG排出量が増減する可能性があります。